脳の中では、ニューロン(神経細胞)のネットワークが膨大な情報を電気シグナルとしてやりとりをしていて、そのやりとりによって私たちの身体は動き、記憶や感情というものも生まれてくるようです。
そのニューロンとニューロンの間で情報をやり取りするには、神経伝達物質というものが欠かせず、それは100種類以上あると言われているが、今のところその働きなどがはっきり確認されているのは25種類ほどで、その中でも「やる気」を起こす「ドーパミン」、「集中」やときに「怒り」に繋がる「ノルアドレナリン」はよく知られています。
「セロトニン」もその一つで、睡眠や、体温調節、ホルモン分泌などに関与するだけではなく、沈んだ気持ちを明るくしたり、穏やかなしあわせ感を作る作用があり、不安を抑えて心の健康を守ってくれる大事な物質です。
医師の鎌田實氏は、著書「がまんしなくていい」の中で、私たちの「気分」はそのときの脳の神経細胞(ニューロン)間でどんな情報がやりとりされるかによってつくられ、それはそのまま「脳」の中の神経伝達物質が、わたしたちの「心」を作り、性格に影響を与えていると述べています。
これは、自分がどんな神経伝達物質を分泌するかで、心の状態も変わってくることを示しています。
怒りやイライラ、不安を持ちやすい人は、セロトニンの分泌が減少しています。
不安を抑えてくれる物質であるセロトニンは、交感神経を少し刺激して、爽快な気分をもたらし、さらに「もっと」「もっと」と、さらなる快感を得ることを促すドーパミンの暴走も、抑制してくれるというのです。それがギャンブルや買い物、アルコール依存症をも防いでくれます。
心の病が増え、メンタルヘルスが注目を浴びている今、不安やイライラを抑えて精神を安定させ「幸せホルモン」や「喜びホルモン」、そして「癒やしのホルモン」と呼ばれている「セロトニン」の果たす役割はとても大きいと言えるでしょう。
それでは、そのセロトニンは、どうしたら十分に出せるようになるのでしょう?
セロトニンを分泌させるには、1つはセロトニンが豊富な食材を取ることと、それ以上にセロトニンをたっぷり分泌できる「心がまえ」が大切のようです。
食材では、セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸から作られるので、赤身の肉や魚、チーズなどがセロトニンの材料になるので、定期的に取ることと、「心構え」としては「小さな感動」を敏感にキャッチできるアンテナを持つことが非常に大事なようです。
これは「自己肯定感」の土台作りでも非常に大事にしている部分ですが、小さな「幸せ」と感じてそれを感動につなげていくには、起こった出来事や状況を「肯定的」に見る目が必要になってきます。
今足りないものや欠けているものではなく、今あるものに「ありがたい」という気持ちが向けられると、感謝の思いが溢れてきます。
幸せのハードルをとことん低くして、不幸のハードルを上げていくことも大切かもしれません。
今まで、ものすごく楽しいことや、嬉しいことしか、感動を感じられなかったとしたら、そこに五感で感じる「ほのかな」「わずかな」「ささやかな」という小さきことへの感動を加えてみると「幸せ感度」を高めていけます。
「小さな感動」は私たちの周りに沢山ありますが、それに気付けるようになると、小さな幸せを感じられる「幸せ感度」というセンサーがぐんぐん上がっていきます。
すると、わけもなく幸せと思えることや、ささやかな喜びに気付けるようになり、なんてことのない毎日の中に、小さな感動が沢山あることに気付くことができるのではないでしょうか?
美味しいものを食べた時、綺麗な景色を見た時、見知らぬ人の親切に出会った時、赤ちゃんの笑顔に会った時、その喜びや感動を味わってください。
小さな感動をいつも感じられる自分になれると、いつも楽しみや喜びに包まれていられるます。その状態のとき、セロトニンはたっぷり分泌されて、さらにあなたの気分を良くしてくれるのです。
感動する人は幸せです。その人の周りには、さらに幸せが広がります。
スイスのチューリッヒ大学の研究で「脳内セロトニン」が、怒りのコントロールに影響を与えるメカニズムが明らかになりました。
セロトニンの量が低下すると、攻撃性や恐怖に関わる脳の扁桃体という場所と理性と抑制に関わる前頭葉の連携が悪くなり、怒りを抑制しにくくなり、脳内でセロトニンが分泌できると、怒りを抑制できて情緒の安定にも効果があるというのです。
セロトニンが増えれば、心が変わります。性格が変わります。すると発想の転換ができるようになり、良い循環が起こり始めます。それがますます「セロトニン」が分泌されやすいハッピーな生き方に変わっていき、それが結果として「人生」を変えていくといいます。
あなたの毎日の生活は、幸せホルモン「セロトニン」と仲良しですか?
少しずつ「セロトニン」を分泌できる生活を意識していきませんか?
まずはあなたのまわりにある「小さな幸せ」を見つけてみましょう。
(文責:代表理事 工藤紀子)
参照:「がまんしなくていい」鎌田實著(集英社)より
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