「インポスター症候群」という言葉をご存知でしょうか?
この言葉が社会的に注目されるきっかけとなったのは、フェイスブックの前COO、シェリル・サンドバーク氏が著書『LEAN-IN(リーン・イン)』でインポスター症候群に苦しんでいた自身の過去を明かしたことでした。
それは自分の力で何か達成し、周囲から高く評価されても自分にはそのような能力はない、評価されるに値しないと自己を過小評価してしまうことです。
インポスター(impostor)は詐欺師、ペテン師を意味する英語で「インポスター症候群」とは、これまでの成功は自分の実力ではなく、運や周りの人のおかげだと思い、自分のキャリアはまがいものだと後ろめたく感じたり、いつか自分が“詐欺師”であることが発覚するのではないかといった不安な心理状態になり昇進に消極的になる状態をいいます。
男性より女性が陥りやすいとされ有能な女性、高いキャリアを築いている女性や専門職の女性に多い傾向があるとも言われます。
では、なぜ多くの女性が同症候群に陥るのでしょう?
それは幼少期から家庭や社会で「女性はおとなしく控えめがよい」といったジェンダー規範が影響し、それが自信をなくす要因となっていると考えられます。
女性管理職比率の向上が企業に求められている中でインポスター症候群に陥っている女性を管理職や役員などに登用した場合、「自分は単なる数合わせのために選ばれたに過ぎない」と思い込んでしまうこともあるようです。
そうなると本来の能力が発揮しづらくなります。
2020年に日本の学生男女1000人に行った調査では「将来リーダーとして職場で責任のある仕事」を希望する女性は9%と男性の半数に留まり女性は学生時代からリーダーになることに懐疑的であるという結果が出ました。
背景には責任のある地位に就くには長時間労働をしなければならずプライベートとの両立を諦めなければとの意識があり、育児と介護などのケア労働との両立の難しさに加え競争や押しの強さといった男性的なリーダー像と自分自身のイメージの不一致も一因だとアジア開発銀行駐日代表の児玉治美氏は述べています。
企業でも昇進のチャンスがあるのに「自分には無理です」と尻込みしてしまう女性も多く女性活躍推進として女性管理職比率の向上が企業に求められていますがなかなか進んでいません。
ここを改善していくには男女ともにワークライフバランスを実現する政策やジョブ型雇用の普及、クオーター制の導入などや子どものころからのジェンダー教育でジェンダー規範を押しつけないことが不可欠です。
国際NGO「プラン・インターナショナル」が世界19カ国の15~24歳の女性に行った2019年の調査では、リーダーとしての能力に多少なりとも自信を持つ日本の女性の割合は27%と全体平均(62%)を下回りました。
当協会では女性がキャリアアップへの自信をつける研修のお問合せを多くいただいていますが、今、職場で女性リーダーを増やすには女性の自己肯定感を高める教育なしには難しいと考えています。
(文責:代表理事 工藤紀子)