わたしたちは自分が目指す理想の状態にならないときに、嫌な気持ちや感情的になることがあります。
それはなんらかの自己防衛のスイッチが入ったサインですが、ここでは、自己価値が脅かされていると感じやすい下記の症状を作り出している「完璧主義」「全か無か思考の二分法的な思考」について取り上げたいと思います。
「ちょっとしたミスが許せない」
「間違いや失敗を極度に恐れる」
「あいまいさが許容できない」
「うまくいったところより、うまくいかないところにフォーカスしてしまう」
「人にも、自分にも、なかなか満足することがない」
あなたも、このような感覚を持つことはないでしょうか。
これらの行動は、「ダメな人間だと思われたくない」「能力がないと思われたくない」という、自分に対しての恐れが強くあるときに、完璧であることで自己価値を保とうと無意識に選択してしまいます。誰もが持っている「好かれたい」「重要であると感じたい」「能力があると感じたい」という根源的な欲求の部分が脅かされの自己防衛的な態度です。
精神科医の岡田尊司氏によると、
完璧主義をつくる「全か無か」という二分法的な思考には、根本に自己否定があるといいます。それは「親から愛されなかった」、「認められなかった」という子ども時代の体験に由来し、子ども自身が自己否定から自分を守るために持ち続けてきた思考だといいます。
自分はダメな子だという思いを抱えた子どもが、何かを成し遂げたときに、親や周りから肯定的な評価を与えられた場合、その子どもは、「周囲から評価される自分」と「否定される自分」という両方の自分を抱えるようになります。
そこで子どもが選択するのが、「周囲から評価される自分」です。このように子ども時代から持ち続けていたものを私たちは無意識のうちに大人になっても持ち続けるというのです。
大人になってからも、評価される自分を目指す中で、理想通りに物事が進めば、心の底に潜んでいる「自己否定」は表面に出てくることはありませんが、何か思い通りにならない事態に直面したり、失敗やミスをしたときには、完璧さで守ってきたプライドは傷つき、自己防衛はもろくも崩れ去ることになります。
有能であること、特別であることによってしか自分の価値を保てていないと、その支えとなるものを失ってしまったときに、もともと根本にあった自己否定が再び顔を出し、自分を守るどころか追い詰めてしまいます。
岡田氏は、完璧主義をいくら追及したところで、その根底に潜んでいる自己否定を克服することにはならず、完璧な人生を求めても、本当の自分を守ることにはならないと断言しています。
ここで、あなたに質問です。
「失敗は成功の反対でしょうか?」
あなたはどう思いますか?
完璧主義の傾向が強いと、失敗か成功かの二分法に囚われてしまい、失敗が次の成功を生み出すということには目が向きません。成功の陰には山のような失敗があることも珍しくありません。数々の失敗があって成功が生まれます。
つまり、失敗と成功は、言葉の上では対立概念ですが、それは言葉の制約にすぎず、失敗と成功は連続したものであり、互いに互いを必要としている一つのものであると考えることもできます。失敗と成功は、実は違う断面に過ぎず、本当の意味では、失敗と成功は対立概念ではないと岡田氏は述べています。
自己肯定感が低いと全か無か思考になりやすく、一度の失敗だけで、すべてが失敗に終わったような挫折感を感じやすかったり、それだけで自信をなくし、自己否定のループに入ってしまいます。失敗が一度や二度起きただけで、ずっと失敗が続き、この先も成功しないような気持ちに襲われてしまうのはとてももったいないことです。
そこで、失敗が何回か続いたからといっても、それですべて失敗だとは思わずに、そこから成功が準備されているのだという考え方、また、失敗があるからこそ、うまくいったときの楽しみや喜びが増すという考え方を持てたらどうでしょう。
これまでずっと自分を守ってきた考え方をいきなり変えることは容易ではありません。「完璧主義」は子ども時代に周囲に評価される自分であるために、自分に課してきたとしたら、大人になったあなたは、その思考を緩めるという選択もできます。
「完璧主義」の思考を緩めていくためには、新しい視点を持つことをお勧めします。例えば、できないことや、物事の否定的な面に敏感になっていたとしたら、その視点を少しずつ肯定的な面に着目できるようにするだけでも変わってきます。
何か失敗したり、自分にとって都合が悪いことが起こったときは、そこにも何か良いことがあるはずだという肯定的な視点で、物事を見る癖づけをしていけると、「完璧主義」「全か無かの二分的思考」を緩め、これまで自分を守ってきた認知を変えることができるようになり、自己肯定感を高めていけるのです。
自己肯定感を高めることは、自分を苦しめていた考え方やルールを適正なものに戻していくことです。
完璧主義の傾向が強い方ほど、そこに生きにくさを感じている人ほど自己肯定感を意識してみてください。
自己肯定感を高めるトレーニングをしていくと、どんどん生きやすくなるはずです。
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(文責:代表理事 工藤紀子)
参考文献:「あなたの中の異常心理」岡田尊司著 幻冬舎新書
「職場の人間関係は自己肯定感が9割」工藤紀子著 フォレスト出版
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