スケードボードの堀米雄斗選手は、「自分のすべてを出し切る」と臨んだ2度目のオリンピックの決勝の舞台。表彰台圏外からの大逆転で見事2大会連続の金メダルを手にしました。
最後の技は、日本代表の早川コーチがパリ大会に向けて「堀米選手が死ぬほど練習してきた」と明かす大技でしたが、レールにボードがうまくはまらず、2回目、3回目と失敗が続き、体をコンクリートに打ちつけるばかりでした。
その間、ライバルたちは高難度の技を次々と成功させ、さらに得点を伸ばしていきました。
この大技「ノーリーバックサイド270ブラントスライド」はボードの前側をたたいて飛び上がり、空中で体ごと270度回転して、後輪部分をレールにかけて滑り降りる大技で、堀米選手が逆転でパリオリンピックへの切符をつかんだ6月の大会で初めて成功させた技でした。(NHKWEBニュースより)
そして、4回目も着地できず転倒し、この時点で順位は7位まで下がり追い詰められます。おでこをコンクリートにつけて目をつぶっている姿は見ていてつらいものでした。
しかし、堀米選手はただ失敗を繰り返す中でも「イヤホンをつけていたが、音楽をかけずにできる限り自分の滑りに集中していた」とその集中力は研ぎ澄まされていきました。
メダルをかけた最後の5回目の滑走。ここで失敗すれば、連覇はおろか、メダルにも手が届きません。
そして、大声援の中滑り出し、着地も完璧に最高得点、こだわり続けた大技を最後の最後で成功させ、その時点でトップだった選手をわずか0.1上回り、土壇場でトップに立ったのです。
何度も失敗して、最後の滑走のとき、堀米選手にはどんな思いがよぎっていたのでしょう。
のちにインタビューで「自分との戦いだった。今までそのトリックを練習でやってきたことを思い出して、わずかな時間でも練習で合わせて成功することだけをイメージしていた」。折れても立ち上がって自分との戦いを制した堀米選手。
最後に大技を成功させた堀米選手に対して、それまで1位、2位だったアメリカのナイジャ・ヒューストン選手やジャガー・イートン選手は、『雄斗は最後に絶対決めてくる!』と話していたそうです。なぜなら彼は、プレッシャーがかかるほど、大技を決められる「プレッシャーキング」だから。
この言葉は、堀米選手の大一番のときにプレッシャーを力に変えることができる自分を信じる力「自己効力感」がとても高いことがうかがえます。自己効力感は、「自分のやることはうまくいく」と自分の能力を信じることができる自信です。これまで練習や努力、経験などがベースにした「根拠のある自信」で、最後まで自分を信じ切れるかどうかを左右します。
「本当にプレッシャーしかなかった。東京オリンピックが終わって、先が見えなくなった時期もあった」「本当にここまで来るのに、本当に諦めかけたこともあった」
「本当にチャレンジしかない。スケートは怪我も多いし、心を折られることも多い。でも折れても立ち上がって、折れても立ち上がっての繰り返し。本当に自分との戦いだと思っている」
オリンピック代表に最後に決まるまでは、思うようにいかないことも多く地獄の日々だったとも語っていました。
「本当に少しの可能性、1%ぐらいの可能性だと思うんですけど、その1%を最後まで信じて、このオリンピックでもやってこれて、それが本当に最後に実ってうれしいです」
「NOT DONE YET」“自分はまだまだこれから”は堀米選手の信条。
堀米選手が再びパリ大会で見せてくれた素晴らしい勇姿、残してくれた言葉のひとつひとつは見ていた私たちに大きな力を与えてくれました。
(文責:代表理事 工藤紀子)
※参考記事
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240730/k10014529481000.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/507c5c025a1a7c861aa814ae9ad27613fbf02395