東大経済学部の山口慎太郎先生が、2019年7月30日の日経新聞「やさしい経済学」というコーナーで、「人材投資としての保育」という記事を寄稿されていましたが、文中で、ある幼児教育プログラムの成果を経済的価値に換算すると、その収益率は年率約8%に達し、過去50年ほどの米国株式市場の平均収益率である年率5%を大きく上回るというのです。
幼児期とは満一歳から小学校就学までの時期をいいますが、幼児教育のなかでも子どもの自発的な遊びを尊重し、「非認知的能力」を育むことをねらいとした幼児教育の有無は、子どもの言語能力や知能の発達を促すだけでなく、忍耐力や協調性を高め、問題行動を減らすことが分かりました。
さらに幼児教育の有無は、大人になってからも影響を与え、人生の健康や収入、犯罪率の低下に関わり、その効果は本人だけではなく社会全体に及び警察や司法、社会福祉財政などの税金負担なども軽減することができるという結果は、幼児期の子どもの教育が子ども本人を幸せにするだけでなく、社会全体の負担を減らすということが示されました。
労働経済学がご専門とのことですが、個人の幸せのみならず社会全体の幸せに「教育」がどれだけ寄与するのが良く理解できます。
山口先生も記事中で紹介していますが、有名な幼児教育研究に1960年代に実施された「ペリー幼児教育プロジェクト」があります。この研究結果の興味深いところが、「認知能力」と「非認知能力」の持続的な効果を明らかにしたところですが、幼児教育を受けた子ども達の「認知能力(学力テスト)」が、幼児能力を受けなかった子ども達に比べて大きく向上しただけでなく、忍耐力や協調性などの「非認知能力」も高かったという点です。
また、幼少期に培われた認知能力と非認知能力ですが、認知能力(学力)は8歳ごろになるとほぼ消えてしまう一方、非認知能力は40歳時点でも就業率や所得を上昇させるというのです。
自己価値を認める「自己肯定感」も「非認知能力」の資質の一部ですが、子どもの最初の自己肯定感のベースは、生まれてから3,4歳までの親の言葉がけや働きかけ、育て方により決定します。「非認知能力」の土台となる自己肯定感を育むうえでも非常に重要な「自分は愛されている」「自らの全存在を肯定してもらっている」といった感覚を、幼少期にどれだけ親や周りの大人から感じ取れるかにかかっています。
自己肯定感が低いと自分自身に自信を持つことが出来ず、セルフコントロールも効かなくなります。「根気、粘り強さ、意欲、注意深さ」という点で問題が出ることがあり、何か問題があると条件的反射でカッとなり止めてしまうようになります。
親や養育者は、「認知能力」を上げるための幼児教育に注目しがちですが、その弊害とも考えられる引きこもりの増加や様々な事件の増加を考えると、世界の中でも自己肯定感が低い傾向にあると言われている日本人は、「認知能力」の前に「非認知能力」(自己肯定感)を高める教育にシフトする待ったなしの状況なのかもしれません。
(文責:工藤洋一)
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