2019年10月19日(土)、母がお世話になっている施設、社会福祉法人眉丈会の「金沢五番丁」の家族会で講話をさせていただきました。
同施設を利用中、あるいは入居中の高齢者のご家族や、近隣の住民の方が対象で、認知症に関心のある方々が30人ほど集まってくださいました。
タイトルは、「みんなちがって、みんな正解 認知症家族のかかわりスタイル」。認知症を生きる方と生活すると、コミュニケーションがうまく取れないことが最大の悩みになります。どうしても私たちと同じ現実を理解してもらいたくて、その思いを押しつけてしまいたくなるのです。
でも、「覚えることができない」そして「覚えていたことを忘れていく」方には、私たちの現実を受け入れることはできません。結局は喧嘩のようになってしまい、介護しているはずの私たちが怒鳴ったり、無視したり。そして、決まって後悔の念に苛まれて…。
このようなコミュニケーションを繰り返していると、介護者の自己肯定感はどんどん下がって行きます。実際に私もそうでした。何度言っても忘れてしまう母に苛立ち、肩を強く揺さぶってしまったこともあります。
また、高齢の家族を施設に入れたら入れたで、「この選択がよかったのか」「まわりの人にどう思われるだろう」という考えも生じるようになります。なにをしても、どこか後ろめたさがついてまわるのです。
こうして、介護者の自己肯定感はどんどん下がって行くのです。
今回の講話では、「まず、自分」ということをお伝えしました。すべての人にとって、人生は自分のものであって、他のだれかのものではないこと。自分を満たしてから、周りの人を満たす(介護をしたり、愛したり、ボランティアをしたり)ことができること。そして、「まず他者のため」では自己犠牲的になってしまうことをお伝えしました。
まず、自分を満たし、他の人の介護と自分の介護を比べないこと。そして、自分の人生を生きるために、自分を受け入れ、好きになること。このことを理解していただければと思いながら、約1時間、お話ししました。
今回は触れられませんでしたが、親の介護をする人にとっては、「幼い頃からの親との関係」についても振り返っておくことが有効だと思います。このことについては今後の講演・講話でお伝えできるよう準備を進めていきたいと考えています。
[聴講者の声]
●自分のことを大切にして、人と比べず、羨ましがらず、自分のしたいことをして生きていけばいいのだと思うと、人生が楽しくなりました。
●介護に正解はない、自分の出来る範囲で寄り添うことが大切だと学びました。介護だけに生かすお話ではなく、日々の生活の中でも役立つお話がたくさんありました。ありがとうございました。
(文責・中田有博)