日本史・文化から学ぶ、自己肯定感(2)【良寛】 | 一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会

日本史・文化から学ぶ、自己肯定感(2)【良寛】

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子育てに自信がない、子どもを褒めることができない、という親が増えていると聞きます・・。
毒親、教育虐待という言葉も耳にするようになりました。そんな中、子どもの自己肯定感の育み方はどうしたらよいか、以前よりも大変関心が持たれています。
子どもの自己肯定感の形成には、周囲の大人たちの言動が大いに影響しています。

そこで取り上げたい歴史上の人物は、私の故郷・越後の良寛です。良寛は江戸時代後期の曹洞宗の僧であり、歌人、漢詩人、書家でもありました。生涯寺を持たず、托鉢で生計をたてていましたが、清貧の中、優れた作品をたくさん残されています。そして、なんといっても、子どもたちに大変人気があったことでも有名です。

いつも毬を持ち歩き、子どもたちと毬やかくれんぼをして遊んでいました。ある日、子どもたちと夕方かくれんぼをしていたとき、子どもたちは隠れていた良寛を探すことができず帰ってしまいましたが、良寛はずっと隠れ続け、翌朝農民に、何をされているのですか、と聞かれたときに、「静かに。そんな声をだしたら、子どもたちに見つかってしまう」といわれた逸話などが残されています。(隠れた時間・場所諸説あり)。

しかし、そんな良寛も最初は子どもたちが苦手だったようです。托鉢で回っている時に、子どもたちからからかわれたこともあるそうですが、托鉢で生活をなりたたせていくためには子どもたちとの関係を良好にする必要があり、徐々にうちとけていくようになりました。子どもの純真な心と無邪気な行動、子どもの生きる姿からこそ学ぶことがある、と考えていた良寛は、自らも純真な気持ちで子どもたちと遊んでいたのではないでしょうか。

さらに良寛は愛語を心がけていました。愛語とは曹洞宗の開祖、道元の教えのひとつで、「相手を優しく思いやる言葉」をかけることです。お変わりございませんか。お気をつけて。相手によいことや祝福することがあったら、すばらしいね!よくやったね!おめでとう!よかったね!という言葉をかける。良寛は、特に和願愛語(笑顔でこころをこめて口にする)を大切にし、決して乱暴な言葉を使いませんでした。

貧しかったので、人に与えるものもない。だからこそ、自分の口からでてくる言葉を贈りものと考え、子どもたちには、いつも優しい心のこもった言葉をなげかけていたといわれています。自身も純真な気持ちを失わずに子どもたちに接していたことや、愛語の実践が、子どもたちに受け入れられ、慕われた要因のひとつだったと想像できます。

道元のいた800年前、良寛がいた200年前と現代では環境が大きく変わりましたが、人と人、子どもとの関係で大切にしている行いは全く変わっていません。それだけ私たち人間にとって、「相手を優しく思いやる言葉」はとても大切なことであり、失くしてはいけないことではないでしょうか。

しかし、現代は、激しい競争が存在し、慌ただしい社会であり、多くの大人は子どもたちの純真な心や無邪気な行動に寄り添い、それを受け止めているでしょうか。大人の都合、見栄、意地などを優先してしまい、子どもたちの目線で気持ちを感じとっているでしょうか。

私自身も、子育ての時期は、家事と仕事で自分自身精一杯で、楽しみながら子どもと接していたか、心に余裕がなかったことが多かった、と反省しきりです。
その間も良寛のことをすっかり忘れておりました。

しかし、自己肯定感の学びのおかげで良寛を思い起こすことができました。
自己肯定感を高めると、自分の感情にうまく向き合うことができるようになるため、心の余裕をつくることができます。

子どもはとても敏感です。周囲の大人の自己肯定感が高まり、大人が心から自分を思って接してくれていることを感じることは、子どもの自己肯定感を上げることにもよい影響を与えます。

現代の大人も、素直で純真な気持ちを取り戻す時間を持ち、子どもたちに心をこめた一言を口から贈りたいものです。

(文責:おないみえこ

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