自己肯定感と共依存 | 一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会

自己肯定感と共依存

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共依存

共依存とは

共依存とは、他人に依存するあまり自分自身を見失っている状態のことをいいます。相手に必要とされることに存在価値を感じ、尽くしたい、支配したいという行為がやめられない場合もあります。
様々な共依存がありますが、一方が他方を支配し、他方が一方を被支配者にする依存関係や、支配する方は相手のためといいながら、相手に依存させることで自己価値を支えようとしているケースも見られます。一方は支配することが自身の生きる力になっているため相手を手放さず、もう一方は支配されることになれてしまうので離れようしない場合もあります。
また、一方がもう一方の問題や責任を引き受け、その代わりに自身の欲求や需要を犠牲にしたり、一方が相手に頼りすぎることで、もう一方が負担を感じたり、無力感やストレスを抱えることもあります。これらは健全な関係とは言えません。

その中でも、子どものためといいながら、自分の思い通りに子どもを育てようとし、それを子どもに押し付け愛情と勘違いしていることがありますが、これは母子間の共依存のケースです。このような場合、子どもは生きづらさを感じながらも、親から離れることができません。そして子どもは精神的な自立を阻まれてしまうのです。

共依存は、家族関係や恋愛関係、友人関係など、さまざまな人間関係で見られます。
共依存の関係を改善するためには、相手ではなく、自分に焦点を当てることが非常に重要です。そのためにも、自己肯定感が重要になるのです。

共依存が起こる原因は?

共依存の原因は、さまざまな要因が絡み合っている場合がありますが、以下に一般的な原因を挙げます。

1. 過去のトラウマや家族の影響:
過去の虐待や感情的な家庭環境の中で育った場合、共依存の傾向が生まれることがあり、自己防衛の一環として共依存関係を築くことがあります。
2. 自己肯定感の低さ:
自己肯定感が低いと、他人からの承認や依存されることで自己価値を感じ安心感を得ようとする傾向があります。他者に頼られることで、自分の存在意義を感じることができるため、共依存の関係に陥りやすくなります。
3. コミュニケーションの問題:
コミュニケーションスキルが不十分な場合、自分の感情やニーズを適切に表現できず、他者に依存してしまうことがあります。自分の感情を言葉で伝えることが難しいと、他者に頼ることで自分のニーズを満たそうとする傾向があります。
4. 役割の固定化:
一方が支配者、もう一方が被支配者といった役割の固定化が共依存を引き起こすことがあります。支配者は他者をコントロールすることで安定感を得る一方、被支配者は相手に頼ることでそこが安全な状態だと思うので、相手の傘下に入って出られなくなります。

これらの要素が複合的に作用することで、共依存の関係が形成されることがあります。重要なのは、共依存の原因を理解し、個人の自己成長や関係の改善に取り組むことです。

共依存に陥りやすい人の特徴

1.自分はダメな人間だと思い込んでいる:
自己否定の思考や過度な自己批判により、自分を低く評価し、自信を持つことができない。
(例:いくつかのミスを犯した後、「私はいつもミスをするダメな人間だ」と自己評価が低くなる)
2.相手の気持ちばかりを優先する:自己犠牲的な行動や自己のニーズを後回しにし、他者の要求や欲求を優先する。
(例:友人が自分に会って欲しいと言ったのにも関わらず、自分の予定をキャンセルして彼らに合わせる)
3.自分の意見や気持ちを主張できない:自分の考えや感情を表現することを躊躇し、他者の意見に合わせることが多い。
(例:家族との意見の食い違いがある場面で、自分の意見を述べるのを避けて沈黙する)
4.相手に依存している:自己を補完するために他者の存在や関係に依存し、自己の幸福や安定を他者に委ねる。
(例:パートナーがいないと不安や寂しさを感じ、自己の幸福を相手に委ねる)
これらの特徴は、いずれも自己肯定感の低さを表しています。

自己肯定感が低い人の行動傾向

1.相手に依存する:自己の決定や行動を相手に委ね、自己の幸福や意思決定に関して相手に頼る
(例:自己の時間や活動を常に相手のスケジュールに合わせる)。
2.相手をコントロールしようとする:
相手の行動や意見を自己の思い通りにするために、強制的な影響を与える行動を取る(例:相手のスケジュールや行動を管理し、自己の要求に従わせようとする)。
3.相手に責任を押し付ける:
自己の感情や状況の責任を相手に転嫁し、自己の問題や困難を相手に解決させようとする(例:自己の失敗やミスを相手のせいにして責任を逃れる)。
4.相手の感情に左右される:
相手の感情や反応に敏感で、自己の感情や行動を相手の反応に合わせる(例:相手が怒ったり不安になったりすると、自己も不安や焦燥感を抱く)。

このような行動は、相手との関係を悪化させる原因となり、共依存に陥るリスクを高めます。

コードペンデントパーソナリティ障害とは

「共依存性パーソナリティ障害(Codependent Personality Disorder)」は、精神医学の分野で用いられる診断名ではありません。ただし、”コードペンデント(Codependent)”という言葉は、共依存と関連付けられる概念を表すために一般的に使用されています。

共依存は、他人に過度に依存し、自分の価値や幸福感を他者の承認や関係に頼っている傾向です。共依存の人々は、他人の感情やニーズを優先し、他者の問題や困難に対して関与しすぎる傾向があります。彼らは頼りがいを求め、他者を支配することで自己の安全や価値を感じようとすることがあります。彼らはしばしば自己否定的な感情や自己肯定感が低く、自己アイデンティティを他者の期待や要求に合わせてしまうことがよくあります。

共依存は、家族の中での成長や過去のトラウマ、コミュニケーションスキルの欠如など、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。共依存の特徴を持つ人々は、自己認識や自己愛についての問題を抱えることがあります。

ただし、共依存は厳密なメディカルモデルとしては認識されておらず、国際的な精神医学的診断基準(DSM-5など)には含まれていません。共依存の特徴を持つ人々の治療やサポートは、一般的に心理療法やグループセラピーなどを通じて行われます。

関係性依存とは?

関係性依存(Relational dependency)は、個人が他者への関係に過度に依存し、自己の価値や幸福感を他者の承認や関係に頼る傾向を指します。関係性依存の人々は、自己を他者に合わせることや、他者のニーズを満たすことに過度に焦点を当てる傾向があります。

関係性依存の人々は、自己のアイデンティティや幸福感を他者の存在や評価に依存しているため、自己を犠牲にすることがあります。彼らは他者からの承認や愛情を得るために、頼りがいやサービスを提供し、他者のニーズや要求を優先します。また、彼らは自己のニーズや欲求を無視したり、自己否定的な感情や犠牲を厭わないことがあります。

関係性依存の人々は、自己認識や自己愛に関する問題を抱えることがあります。彼らは自己肯定感が低く、他者の存在や関係に頼らないと自己の存在を不安定に感じることがあります。

関係性依存は、家族の中での成長や過去のトラウマ、コミュニケーションスキルの欠如など、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。関係性依存の特徴を持つ人々の治療やサポートは、心理療法やグループセラピーなどを通じて行われる場合があります。

共依存を避け、自己肯定感を育むため

1. 自己認識と自己理解の向上:
自己をより深く理解し、自己認識を高めることが重要です。自己の価値や目標、強みや弱点を知ることで、自己を受け入れる基盤が構築されます。心理療法や自己啓発の活動を通じて、自己の内面に目を向けることが役立ちます。
2. 自己承認と自己価値を高める:
自己肯定感を高めるためには、自己承認と自己価値を強化する必要があります。自分の成果や努力を認め、自分に対して優しく、自己評価を適切に行います。さらに、自分自身を尊重し、自己価値を強化するための活動や瞑想などの心身のケアを取り入れることも重要です。
3. 健康な関係性の構築:
健全な関係性を築くことは、共依存から抜け出すために重要です。健康な関係性では、相互の尊重とバランスがあります。相互依存ではなく、相互支援を目指しましょう。自己のニーズや欲求を表現し、自分自身の幸福を追求することが大切です。
4. 自己効力感の醸成:
自己効力感は自己肯定感の重要な要素です。自分が問題解決や目標達成に向けて取り組むことで、自己効力感を高めることができます。小さな成功体験を重視し、自分の能力や資質を信じることが重要です。
5. 健康的な自己ケア:
自己肯定感を高めるためには、心身の健康を維持することが重要です。バランスの取れた食事を摂り、適切な運動や睡眠を取ることで、身体的な健康を促進しましょう。また、ストレス管理やリラクゼーションの技術を学ぶこともおすすめです。
6. 自己成長と学習:
持続的な成長と学習は自己肯定感を高めるために重要です。新たなスキルや知識を獲得し、自己実現することで自己の自信を深めることができます。趣味や興味を追求することも、自己成長の一環とみなすことができます。

以上のアドバイスを実践し、継続的な努力を行うことで、共依存を避け、自己肯定感を育むことができます。ただし、個別の状況やニーズに合わせて適切な専門家のサポートを受けることも大切です。

【参考文献】
1. Ryan, R.M. & Deci, E.L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68-78.
2. Bowlby, J. (1973). Attachment and Loss: Volume II. Separation: Anxiety and Anger. Basic Books.
3. Scharfe, E., & Cole, V. (2006). Toward a developmental perspective on self-esteem. Developmental Review, 26(2), 185-209.
4. Brennan, K.A., Clark, C.L., & Shaver, P.R. (1998). Self-report measurement of adult romantic attachment: An integrative overview. In J.A. Simpson & W.S. Rholes (Eds.), Attachment theory and close relationships (pp. 46-76). Guilford Press.
5. Helgeson, V.S. (1994). Relation of agency and communion to well-being: Evidence and potential explanations. Psychological Bulletin, 116(3), 412-428.

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