心理的安全性を支える組織の中の自己肯定感

工藤紀子
この記事の監修者
工藤紀子|代表理事
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会 代表理事。自己肯定感の研究と実践に32年取り組み、のべ2万8千人以上に研修を実施。著書に『レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書』『職場の人間関係は自己肯定感が9割』等。詳しいプロフィール →

ビジネスの現場では、メンタルヘルス、レジリエンスの強化、そして、エンゲージメント強化の面からも自己肯定感が非常に重要であるという認識が高まっています。それは職場の人間関係や組織の在り方を決めているのが、個々の自己肯定感だと理解されてきているからです。

数年前に、米グーグル社が社内調査「プロジェクト・アリストテレス」で「チームが高いパフォーマンスを達成する上で最も重要な要因に、心理的安全性がある」と検証しました。

心理的安全性とは、組織の中で、自分の過ちを認める、疑問を投げかけられる、とっぴなアイディアを出すなど、リスクある行動をしても「誰も自分をばかにしたり責めたりしない」と信じられる環境のことあり、パフォーマンスでは、売り上げ目標の達成に限らず、重大事故の回避や経営変革、そしてイノベーション創出といった様々な場面での効果が指摘されています。

しかし、心理的安全性の高い環境を創りだして維持するのは大変難しい、という声をよく聞きます。そこにはボトムアップではなく、リーダーが中心となり、チーム全体を見てそれに沿って心理的安全性が高く保てる環境を創り上げていく必要があるからにほかなりません。そこでリーダーの自己肯定感が大きなカギを握っているのです。

アメリカの組織行動学者のクリス・アージリスは、「人は脅威を感じたり、当惑したり、自己価値を脅かされそうになると、無意識に自分の中に深く根差した行動のマスタープログラムに戻ってしまう」と述べています。

職場などでリーダーがその状態になると、自分の地位や面目を保つために、頑なまでに自分を正当化しようとする保身的態度が強くなります。そうなるとチームの心理的安全性は保たれないだけでなく、チームメンバーも自己保身が強くなり、柔軟な組織とは程遠くなるのです。

この保身的態度は本能的な行動なので、すべてが悪いわけではありませんが、自己肯定感が低いと、どうしても「自己価値への脅威」を感じる頻度が高くなるため、それが自らの成長を妨げることとなり、組織内では他者との協働を阻害し、良好な関係を築くことを難しくするのです。チームでこの状態が蔓延すると、心理的安全性は著しく阻害されます。

心理的安全性の高いチームには自己肯定感が高いリーダーが必要です。そうでないとリーダー自身が辛くなります。なぜなら、メンバー同士が信頼関係を高め合える環境づくりを担うのもリーダーであるからです。

リーダーの自己肯定感が高いと、チームの仕事でミスをしたときなどは、その報告にとどまらず、そこから何を学べるのかを議論して、チームで共有できる雰囲気を根づかせることができますので、心理的安全性は徐々に定着していきます。

心理的安全性を支えるのは、誰もが自己保身をしなくて済む環境であり、それはリーダーをはじめ個々の自己肯定感が大きな鍵を握っているのです

こちらの投稿もご参考に。

心理的安全性と自己肯定感の重要性

 

【参考文献】
「チーム心理の安全性」野村マネジメントスクールフェロー 遠藤幸彦氏(日本経済新聞2019年8月)
「職場の人間関係は自己肯定感が9割」工藤紀子著

(文責:代表理事 工藤紀子)

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