心理的安全性を支える組織の中の自己肯定感


ビジネスの現場では、メンタルヘルス、レジリエンスの強化、そしてエンゲージメント強化の面からも自己肯定感が非常に重要であるという認識が高まっています。それは職場の人間関係や組織の在り方を決めているのが、個々の自己肯定感だと理解されてきているからです。
Googleが見つけた、チームの最重要要因
数年前に、米グーグル社が社内調査「プロジェクト・アリストテレス」で「チームが高いパフォーマンスを達成する上で最も重要な要因に、心理的安全性がある」と検証しました。
心理的安全性とは、組織の中で、自分の過ちを認める、疑問を投げかけられる、とっぴなアイディアを出すなど、リスクのある行動をとっても罰せられたり恥をかかされたりしないと信じられる状態を指します。
なぜ、維持するのが難しいのか
しかし、心理的安全性の高い環境を創りだして維持するのは大変難しい、という声をよく聞きます。
制度として「何を言っても大丈夫です」と宣言することはできます。けれど、宣言と実際の空気が一致しないことは珍しくありません。難しさの根っこは、仕組みの外側――そこにいる一人ひとりの状態にあります。
クリス・アージリスが指摘した「保身」
アメリカの組織行動学者のクリス・アージリスは、「人は脅威を感じたり、当惑したり、自己価値を脅かされそうになると、無意識の中に深く根差した行動のマスタープログラムに戻ってしまう」と指摘しました。
リーダーが保身に入ると、何が起きるか
職場などでリーダーがその状態になると、自分の地位や面目を保つために、頑なまでに自分を正当化しようとする保身的な態度が表れます。
この保身的態度は本能的な行動なので、すべてが悪いわけではありません。けれど自己肯定感が低いと、どうしても「自分を守る」側に傾きます。
リーダーが保身に入った場面で、現場では次のようなことが起こります。
- ミスの報告が「言い出しづらいもの」になる
- 反対意見が「挑戦」ではなく「攻撃」として受け取られる
- 判断の理由が共有されず、指示だけが降りてくる
いずれも、心理的安全性が最初に失われる場所です。
自己肯定感の高いリーダーが必要な理由
心理的安全性の高いチームには、自己肯定感の高いリーダーが必要です。そうでないと、リーダー自身が辛くなります。
リーダーの自己肯定感が高いと、チームの仕事でミスをしたときなどは、その報告にとどまらず、そこから何を学べるかという視点で場を進めることができます。ミスが「誰の責任か」ではなく「何が起きたか」として扱われるようになります。
心理的安全性を支えるのは、誰もが自己保身をしなくて済む環境であり、それはリーダーをはじめ個々の自己肯定感によって成り立っています。
「自己肯定感の高いリーダー」は、強く出る人ではない
ここを取り違えると、まったく逆の人物像になります。
声が大きく、押しが強く、部下を従わせられるリーダーは、自己肯定感が高いわけではありません。むしろ自信のなさを優位性で覆っている場合が多く、脅威を感じた場面でいちばん早く保身に入ります。
自己肯定感の高いリーダーは、「自分が間違っていた」と言える人です。それを言っても自分の価値が減らないと知っているからです。そしてその一言が、チームの誰にとっても「自分も言っていい」という許可になります。
この点はパワハラをする人の自己肯定感は高いのかでも詳しく扱っています。
人事として、どこから手をつけるか
心理的安全性を測るサーベイを導入したあと、スコアが上がらないという相談をいただくことがあります。順番を見直すと進むことがあります。
① 管理職のケアを後回しにしない。余裕を失った管理職は保身に入りやすくなります。部下への関わり方を変える前に、本人が安心できる状態をつくる必要があります。
② 「言える場」より先に「責めない場」をつくる。発言を促す前に、発言したあと何が起こるかが変わっていなければ、誰も口を開きません。
③ スコアではなく、ミスの報告量を見る。心理的安全性が上がった組織では、悪い情報が早く上がってくるようになります。これは数値目標より分かりやすい指標です。
JISEでは、自己肯定感と自己効力感を土台にした企業研修で、管理職層からの働きかけを行っています。ご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。
心理的安全性そのものについては心理的安全性と自己肯定感の関係でも解説しています。
【参考文献】
「チーム心理の安全性」野村マネジメントスクールフェロー 遠藤幸彦氏(日本経済新聞2019年8月)
『職場の人間関係は自己肯定感が9割』工藤紀子著
(文責:代表理事 工藤紀子)
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