2024年10月31日、米大リーグのワールドシリーズで、大谷翔平選手と山本由伸投手が所属するドジャースがヤンキースを破り(対戦成績4勝1敗)、4年ぶり8度目のワールドシリーズ制覇を果たしました。大谷選手にとって、子どものころからの夢であったワールドシリーズ優勝を、メジャー7年目(移籍1年目)にしてついに実現させた瞬間です。この快挙の裏には、大谷選手個人の努力だけでなく、チームの帰属意識と団結力があったからこそ達成できたと言えるでしょう。
FRIDAYデジタルの記事『専門家も説明不可能なチームの団結に驚愕…大谷翔平「ドジャースをワールドシリーズに導いた」意志の力』の記事中、メジャーリーグ評論家の友成那智氏は「ドジャースというチームがこれほど団結するとは思いませんでした。大谷選手にはお見それしました」とコメントしています。
ドジャースは、かつて大リーグ初の黒人選手ジャッキー・ロビンソンを受け入れた球団としても有名であり、歴史的に「他者の受容度」が高いチームかもしれません。ジャッキーとドジャースにはこんな逸話があります。
1947年、ジャッキー・ロビンソンはブルックリン・ドジャースに入団し、大リーグ初の黒人選手人になるという慣例破りの快挙を成し遂げた。
当時ドジャースのオーナーだったブランチ・リッキーは、ロビンソンに「君にとっては、とても辛い日々になるかもしれない。想像もしなかったような差別を経験することもあるだろう。しかし、君に挑戦する気があるなら、私は全力で君をバックアップする。君はこれまで誰もやっていなかった困難な戦いを始めなければならない。その戦いに勝つには、君は偉大なプレーヤーであるばかりか、立派な紳士でなければならない。仕返しをしない勇気を持つんだ」とロビンソンに言い、右の頬を殴った。ロビンソンは「頬はもう一つあります。ご存じですか」と答えたという。リッキーの言ったとおりだった。
ジャッキーは二塁に走るランナーからの肉体的攻撃はいうまでもなく、みんなから口汚くののしられた。対戦チームの選手だけでなく、観客やチームメイトからも黒人差別の暴言を浴びせられた。
ある日、ロビンソンはいつにも増してひどい中傷を受けた。二回目の打席がゴロに終わると、観客席からブーイングが起こった。
だが、何千人もの観客全員が見つめる中、ドジャースの歴史に名を残す名ショート、ピー・ウィ・リースが試合の真っ最中であるにもかかわらず、ジャッキーのところまで歩いていき、この米国初の黒人大リーガーの背中に腕をまわして観客席を見回した。この光景を目の当たりして観客の誹謗中傷は徐々に減っていったという。
「あのおかげで、私は一生を棒に振らずにすんだんです。ピー・ウィは何度も自分を助けてくれた、彼のおかげで私もやっとチームの一員になれたんだ、と思うことができたのです。しかし彼はそのことを自分の手柄にしようとはしなかった」
と、ロビンソンは後に回想している。
後年、リースとロビンソンの関係を元に『チームメイト』という児童書も出版されており(ISBN 0-15-200603-6)、ドジャースには「受容と団結」というDNAが息づいていると言えるでしょう。新しい環境に馴染もうとする人を受け入れる力、それが高い自己肯定感を持った人々のサポートによって成り立つものです。自己肯定感が高く(I’m O.K., You’re O.K.を体現する)、新人や新加入選手を支えるベテランがいることが、ドジャースの団結力の源なのかもしれません。
現代でも、学校や職場で孤独と闘う人は少なくありません。ブランチ・リッキーやピー・ウィ・リースのような存在が周囲にいることで、組織や社会の団結が深まり、幸福度の高いWell-beingな社会を築くことができるのではないかと思います。ドジャースの優勝とジャッキー・ロビンソンの逸話から、そんな未来への可能性を感じました。
I’m O.K., You’re O.K.を学ぶベーシック講座
【参考文献】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3#cite_note-fujisawa-27