日本で最初に「自己肯定感」という言葉を取り入れた臨床心理学者の高垣忠一郎氏は下記のように言い続けてこられました。
「自己肯定感は決して、自分には他人に自慢できるところがあるから、人よりも優れたところがあるから、自分を肯定する感覚ではない。自分のダメなところや弱いところ、悪いところも含めて自分が存在していることはいいことなのだ、許されているのだ、とまるごと肯定する存在レベルの自己肯定感だ」と。
いつからか色んな人が自己肯定感を論ずるようになってきました。
そこには残念ながら、全く間違った捉え方をして「自己肯定感を高めることはよくない」と言っている人がいます。
どのような根拠でそう思われるのでしょう?
多くは自己肯定感の真の意味を理解していないことからくる誤解であることが少なくありません。
ケース1「自己肯定感は他者と比較して自分が優位にあるという評価であり、他者との比較の上に成り立つ」と論じた学者の方がいました。
現実以上に自分が有能だとアピールして称賛を求めるのも、高い評価を維持するために他者の評価に敏感で、評価を得られないと傷つき失望するので、その評価を得るために必死に努力を続ける、これが自己肯定感が高い人の特徴だとその方は書いていました。
これは自分の現実を受け止めることから目を背けていますし、自己肯定感が低い状態からくる自己保身そのものです。
そもそも、高垣忠一郎氏が述べている自己肯定感を理解していれば、他者との比較を行わずに、自分の評価が良くても悪くても、それをあるがままに優しく受け入れることが「真の自己肯定感」だと理解できます。
ケース2「自己肯定感が高いと素晴らしい自分であり続けなければならないため自分の失敗を認められない」と書いていた方もいました。
これも残念ながら自己肯定感が低い状態の自己保身からくるものです。
もしありのままの自分を認めてどんな自分にもOKを出せていれば、たとえ失敗したとしても、その時の失望や悲しさも受け止めて、その結果から得た教訓を次にどう生かすかを考えることができます。たとえどんな結果であっても、最終的にはその結果を受け入れ次の行動につなげることができるのです。
又、失敗の中にも自分が頑張ったことや得られた教訓があったことに気づき、悪い面だけではなく良い面にも目を向けて自分をバランスよく受け入れることができるかどうかも、自分を支えることができる自己肯定感が持てているからです。
ケース3「完璧な自分になろうと自己肯定感を高める必要はない」と書かれた著名な方もいました。
「完璧な自分」になることが自己肯定感を高めることではありません。それはむしろ自己肯定感が低いことからくる考えです。
何かを付け足さなくてもありのままの自分を大切な存在だと感じることで自己肯定感は高まります。
ひとつひとつ訂正して歩くことはできませんが、間違った情報を鵜呑みにしてしまう人がどれほど多いことでしょう。
これからの時代は誰もが自分を受け入れ、他者も受け入れていくこと、「I am OK. You are OK.」のベースとなる自己肯定感がますます重要になります。
なぜならそれが人を受容する優しさや思いやりをもつことにつながるからです。
私たち協会にできること
それは、これからも地道にコツコツと、自分を支えることができる「真の自己肯定感」を愛と誠意をもってひとり一人の方にお伝えしていくことです。
そこで希望を見出し本来の力を取り戻してくださる方々が少しでも増えていくことを願って止みません。
(文責:工藤紀子)
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参照:「生きることと自己肯定感」高垣忠一郎著 新日本出版社
「職場の人間関係は自己肯定感が9割」工藤紀子著 フォレスト出版