パワハラをする人の自己肯定感は?

自己肯定感という言葉が広まり、さまざまな解釈が出てきました。そのなかでよくいただくのが、この質問です。
パワハラやモラハラをする人、自分の意見を押しつける人は、自己肯定感が高いのでしょうか。自己肯定感が高い人は、自信満々になって横柄になるのでしょうか。
答えは逆です
ここは声を大にしてお伝えしたいのですが、このような人は決して自己肯定感が高いとはいえません。
むしろその逆で、自分の優位さを誇示して自信のなさを隠している、自己肯定感の低い人です。
なぜ、他者を否定するのか
自分は認めても、他者を認められない
攻撃的(アグレッシブ)な人は、自分は認めても、他者を否定します。
自分を尊重しているのに相手を尊重できないのは、真の自己受容ができていないためです。相手を認めてしまうと自己価値が脅かされると感じてしまうのです。
他者を否定することで自分の優位性を示し、他者をおとしめて自己価値を感じようとする。自己保身が強く、自己肯定感が低いために、そうした態度になります。
本人は「自分の自己肯定感が低い」と思っていない
やりにくいのは、このタイプの人が、自分の自己肯定感が低いとは思っていないことです。
だからこそ周りは「自分をすごく肯定している人だから、これが自己肯定感が高いということなのか」と勘違いしてしまいがちです。けれど、それは違います。
声の大きさや押しの強さは、自己肯定感の高さではありません。本当に自分を受け入れられている人は、相手を押しのける必要がないのです。
「強く言える」ことと「自分を大切にできる」ことは別
自分と相手への向き合い方は、大きく3つに分かれます。
- アグレッシブ(攻撃的)……自分は認めるが、相手を認めない
- ノンアサーティブ(非主張的)……相手は認めるが、自分を認めない
- アサーティブ……自分も相手も、どちらも認める
パワハラやモラハラとして表に出るのはアグレッシブな関わり方ですが、根っこはノンアサーティブと同じです。どちらも「自分と相手の両方を認める」ところに立てていません。だから、強く出る人と、言えずに我慢する人が、同じ職場で組になって現れます。
目指すところは「強く言えるようになる」ことではなく、自分も相手も認められるアサーティブな状態です。その土台が自己肯定感です。
モラハラとの違いは、現れ方だけ
パワハラは職場の優越的な関係を背景にした言動、モラハラは言葉や態度による精神的な攻撃を指して使われることが多く、家庭やパートナー間でも語られます。
場面や呼び名は違っても、根っこは同じです。相手を低く置くことで自分の価値を確かめようとしている。だから、職場でパワハラ的な関わりをする人が、家庭でも同じ形を繰り返すことは珍しくありません。
逆に言えば、どちらも「自分の価値を他者との上下で測らなくてよくなる」ことで変わります。言動の禁止だけでは形が変わるだけで、場所を移して現れます。
「セルフパワハラ」――自分を追い詰める声
近年、「セルフパワハラ」という言い方を耳にすることがあります。他人からではなく、自分が自分に向けて、上司のような厳しい言葉をかけ続けてしまう状態です。
「こんなこともできないのか」「もっと頑張らないと価値がない」――外からのハラスメントがなくても、頭のなかで同じことが起きていれば、心は同じように削られます。
そして、自分に厳しい声をかけ続けている人は、その基準をそのまま他者にも当てはめやすくなります。自分を許せない人は、相手の失敗も許しにくいのです。自分への関わり方を変えることが、結果として周囲への関わり方を変えます。
数字で見る、職場のハラスメント
厚生労働省の委託事業として実施された令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に従業員からハラスメントの相談があったと回答した企業の割合は、パワハラが64.2%で最も高く、次いでセクハラが39.5%、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)が27.9%でした。
制度の面でも対応が進んでいます。いわゆるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)は2020年6月1日に大企業で施行され、2022年4月1日からは中小企業も措置義務の対象になりました。相談窓口の設置や方針の明確化は、すでにすべての企業に求められていることです。
ただ、窓口をつくり、研修で「やってはいけないこと」を伝えるだけでは、同じことが繰り返されることがあります。行為者の側にある「自信のなさ」に手が届いていないからです。
受ける側ができる、最大の防御
本当は自信のなさを打ち消すために、自分より弱い立場の人には強い態度をとり、常に相手より優位に立とうとしているだけ――そう理解できれば、必要以上に恐れることはありません。
そして、そのような人に対する最大の防御は、自分が自分を認めてあげて、自分の一番の味方になってあげることです。
これが自己肯定感です。
相手の言葉を「自分という存在全体への評価」として受け取ってしまうと、心は削られ続けます。「この人は自分の不安を埋めるために強く出ている」と切り分けられるだけで、受けるダメージは変わります。
もちろん、暴力や脅迫、就業環境を著しく害する行為は、個人の受け止め方で解決すべきものではありません。社内の相談窓口や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、外部の窓口に相談してください。
企業・人事が手を打つべきところ
ハラスメントを「個人の資質の問題」として処理すると、担当者が変わるたびに同じことが起こります。手を打つべきなのは、次の2つです。
① 行為者の自己肯定感に触れる。「相手を認めても自分の価値は減らない」という感覚が育たないかぎり、優位に立とうとする行動は形を変えて続きます。禁止を伝える研修と、土台を整える研修は別のものです。
② 管理職が自分を追い込んでいないかを見る。余裕を失った管理職は、不安を部下への強い態度として出してしまいやすくなります。管理職自身のケアは、本人のためだけでなく、組織の防止策でもあります。
JISEでは、自己肯定感と自己効力感を土台にした企業研修を提供しています。ハラスメント防止を単独のテーマとして扱うのではなく、一人ひとりが「自分は大丈夫だ」と思える状態をつくることから始めます。ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
(文責:代表理事 工藤紀子)
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JISEは、代表理事・工藤紀子が1994年から続ける研究と独自メソッド「ラブマイセルフ・メソッド®」で、
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