組織効力感の高め方|「私たちならできる」を育てる5つのステップ


1on1を導入した。心理的安全性の研修もやった。個人面談で一人ひとりの話も聞いている。それでも、組織としての一体感が生まれない——。
人材育成に力を入れている企業ほど、この壁に突き当たります。原因は施策の不足ではなく、見ている単位が「個人」にとどまっていることにあります。
そこで手がかりになるのが組織効力感です。「自分ならできる」(自己効力感)ではなく、「私たちならできる」という、組織やチームで共有される確信を指します。
本記事では、組織効力感を高めるための5つのステップを、人事・管理職の実務に落として解説します。
個人施策だけでは組織が変わらない理由
経済産業省 近畿経済産業局が公開している人的資本の可視化ツールでは、組織効力感が次のように説明されています。
組織効力感(Collective efficacy)とは、組織やチームメンバーが共有する「自分たちならやれる」という確信や信念を指す。個々人の自己効力感の単純な総和ではなく独立したグループ特性である。
「単純な総和ではない」という一文が重要です。
自己効力感の高い人を集めても、組織効力感が高くなるとは限りません。一人ひとりが「自分ならできる」と思っていても、「この人たちとならできる」と思えなければ、組織としては力になりません。
現場で起きている次のような症状は、この観点で整理できます。
- 優秀な人はいるのに成果が出ない…個人の力が足し算になっていない
- 1on1をやっているが一体感がない…上司と部下の縦の線は繋がったが、横が繋がっていない
- 心理的安全性はあるが挑戦しない…発言は許されるが、「やれる」という見通しがない
- 優秀な人ほど辞める…自分の力は伸びたが、この組織でやる意味を見いだせない
とくに4つ目は見落とされがちです。自己効力感が高い人ほど「どこでもやっていける」と考えるため、組織効力感が低いと真っ先に外に出ていきます。個人の育成に力を入れるほど離職が増える、という一見矛盾した現象は、ここから説明できます。
組織効力感という概念の理論的な背景は、組織効力感とは|「私たちならできる」を育てる5つの要素で詳しく解説しています。
組織効力感を高める5つのステップ
ステップ1.土台となる自己肯定感を確認する
いきなりチームビルディングに入っても、うまくいかないことがあります。他者を信頼する力は、自分を認める力から始まるからです。
自分に自信が持てない人は、他者の評価が気になって意見を言えません。助けも求められません。相互作用が起きないため、組織効力感が育つ機会そのものが生まれないのです。
当協会が自己肯定感を土台と位置づけているのは、この順序があるためです。
- 自分を認められる(自己肯定感)
- → 他者を認められる
- → 意見を言える
- → 助けを求められる
- → メンバーを信頼できる
- → 「このチームならできる」が形成される
心理的安全性の施策が機能しない組織では、この1段目が抜けていることがあります。発言が許される状態をつくっても、発言する側に土台がなければ行動は起きません。
ステップ2.「一緒にやってできた」経験を設計する
個人の自己効力感が成功体験から育つのと同じく、組織効力感も共同の成功体験から育ちます。
ここで大切なのは規模ではありません。大きなプロジェクトの成功を待つ必要はなく、小さくても「チームで乗り越えた」と全員が認識できる出来事が効きます。
- チーム単位で完結する課題を、意図的につくる
- 終わったら必ず振り返りの場を持つ(やりっぱなしにしない)
- 振り返りでは「誰が頑張ったか」ではなく「何がうまくいった仕組みか」を言語化する
振り返りを省くと、成功しても「たまたま」で終わります。経験を確信に変えるのは、言語化の工程です。
ステップ3.目的を言葉にして、共有し直す
近畿経済産業局の指標では、組織効力感の構成要素として「共通の目的・ビジョンが共有され、根付いているか」が挙げられています。
注意したいのは、掲げてあることと、根付いていることは別だという点です。経営理念が壁に貼ってあっても、メンバーが自分の仕事と結びつけて語れなければ、共有されているとは言えません。
- 「うちのチームは何のためにあるのか」を、メンバー自身の言葉で話してもらう
- ばらつきがあれば、それ自体を議題にする
- 上から与えるのではなく、すり合わせる
ステップ4.お互いの強みが見える状態をつくる
同じ指標に「メンバーの能力への信頼」という要素があります。「このメンバーには目標を達成する力がある」と思えるかという観点です。
ところが多くの職場では、隣の人が何を得意としているかを知りません。知らなければ信頼のしようがなく、助けを求めることもできません。
- 各自の強みを表明する機会をつくる(自己申告でよい)
- 困ったときに誰に相談すればよいかが分かる状態にする
- 管理職が「この件は◯◯さんが詳しい」と橋渡しする
1on1が縦の線だとすれば、これは横の線を通す作業です。組織効力感は横の線から生まれます。
ステップ5.乗り越えた経験を、組織の記憶にする
構成要素の4つ目は「レジリエンス」——環境が変わったり予期せぬことが起こっても乗り越えられると思えるか、です。
この確信は、過去に乗り越えた記憶から生まれます。ところが組織は、うまくいかなかった時期を早く忘れようとします。
- 困難を乗り越えた事例を、記録して共有する
- 新しく入ったメンバーにも語り継ぐ
- 失敗も含めて「どう切り抜けたか」を残す
管理職が明日からできること
大がかりな制度をつくる前に、日々の関わり方で変えられる部分があります。
- 成果を個人ではなくチーム単位でも言葉にする…「◯◯さんのおかげ」だけでなく「この進め方がうまくいった」を足す
- 相談を歓迎する姿勢を見せる…助けを求めることが評価を下げないと、行動で示す
- できない理由ではなく、できる条件を一緒に探す…「無理です」への反応が、次の発言を決めます
- メンバー同士をつなぐ…上司が情報のハブになりすぎると、横が育ちません
効果をどう測るか
組織効力感は、社員サーベイの設問として測定できます。近畿経済産業局の資料では、次の5つの観点を5段階で問う設計が示されています。
- 協働とチームワーク
- 共通の目的・ビジョン
- 団結力・結束
- レジリエンス
- メンバーの能力への信頼
個人の自己効力感の測定とは別の指標です。両方を測れば「個人は高いが組織は低い」という状態を切り分けられます。この状態こそ、優秀な人材の離職が起きやすい局面です。
研修でどう扱うか
当協会の企業研修では、自己肯定感と自己効力感を組み合わせて扱っています。個人の「自分ならできる」を育てることは、組織の「私たちならできる」が生まれる前提にあたるためです。
研修にグループワークを取り入れているのは、相互作用のなかでしか育たない部分があるからです。講義を聞くだけでは、ステップ2で述べた「一緒にやってできた」経験は生まれません。
経営者から新入社員まであらゆる階層に対応しており、内容は課題に応じて構成します。
※『組織効力感』は株式会社Momentorの登録商標です。本記事では概念の解説として用いています。
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