「これが私。こうしてみんなみたいに、すらすらとすぐに言葉は出てこなくても、これも私で、私らしくて、これでいいと今は思えます。」
これは、人前で話すことに苦手意識をもっていた小学校6年生の女の子が、クラス全員の前で、口にした言葉です。
自分の将来の「ありたい姿」を自由に思い描き、お互いのビジョンをクラスメイトと語り合う学習での一場面でした。
とってもゆっくりだけど、落ち着いて芯のある言葉。
しばらくの沈黙があった後、静かに語られたこの言葉は、当時担任だった私の心と教室に響きわたりました。
「あるがままの自分」を受け入れて、「これでいいんだ」と思えているその子の姿、心の成長に、じんわりと暖かいものが込み上げてきました。
私は19年間、公立小学校の先生として、「学びの楽しさと確かな自信」を育むことに力を注いできました。
学校現場や子育ての場面では、次のようなやりとりがよく見られます。
大人が子どもに対して、「やればできる!」と励まし、「よくできたね」と褒める光景です。
「できたら、ほめる」ことを繰り返せば、きっと子どもは「自信」をもって、生きていけるようになると信じて・・・。
でも、現実はそうはならないことの方が、多いような気がします。
多くの子どもたちは、「周りの人にどう思われるか心配で・・・」「どうせ自分なんて・・・」と安心して自分を出せずに、自分を信じることができないのです。
日本の子どもたちは、幼少期にはとても高かった自信や自己肯定感が、大人になるにつれて、どんどん低下していく状況にあります。そうして大人になっていきます。
私の場合も同じでした。物心ついた頃には、いつも人目が気になって、不必要に誰かと比べる。優越感と劣等感を行ったり来たり。そんな不安定で、不確かな自分の存在を必死で支えようと、“できることを増やして、人からの承認を得る”ことで、自信にしたかったのかもしれません。
でも、いつまでたっても、心の中は満たされませんでした。いつもなんだか“生き辛さ”を抱えていました。子どもの自信を育もうとしていた自分自身が、本当の自信(=自分は自分だから、これでいいんだと信じること)をもてていなかったのです。
自信をもって、自分らしく生きていくためには、大人も子どもも関係なく、“できることを増やして、人から認めてもらう”ことより、もっと大切なことがあるんだと気付かされました。
子どもに自信をもってほしい、自己肯定感を高めてあげたい、そして幸せに生きてほしいと願う私たち大人。でもそれは同時に、私たち自身に向けられた心の声なのかもしれません。
自己肯定感を育むのに、遅いということはありません。
初めにご紹介した女の子のように、「どんな自分であっても、それが私。私らしくて、これでいい。」と思えるような子育てと自分づくりに、ぜひ一緒に取り組んでいきませんか?